マレットフィンガー(Mallet finger)

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槌指(つちゆび)

【総論】
槌指は、「つちゆび」または「ついし」と読む。
また、「マレットフィンガー(Mallet finger)」、「ベースボールフィンガー(baseball finger)、「ハンマー指(ゆび)」とも呼ばれる。

野球やソフトボールに好発する。
DIP関節の伸展機構が損傷された結果、伸展機構が正常に働かなくなったものを言う。
放置すること(陳旧例)によってPIP関節が過伸展し、swan-neck変形を起こす。【補足】参照(↓)
新鮮例での適切な治療が重要。

【病態】
1) DIP関節が急激に屈曲されて指伸筋腱終末が断裂を起こしたもの
屈曲変形が強いが発赤、腫脹、運動痛などの症状は軽い。
保存的療法では高い率で伸展不全(extension lag)が出現する。
2) DIP関節が急激に屈曲されて指伸筋腱付着部に小骨片を伴う裂離骨折を起こしたもの
1)と同様に、屈曲変形が強いが発赤、腫脹、運動痛などの症状は軽い。
3) 長軸方向からの強い力(軸圧損傷)によって末節骨が骨折し、DIP関節が伸展できなくなったもの
DIP関節に過伸展が強制されて受傷する。
関節面の1/3以上を占める大きな骨片を伴う。
掌側への亜脱臼を伴った骨折となる。
発赤、腫脹、運動痛などの症状が強い。中 ・ 環指に多発する。
【分類】
1) 終止伸筋腱のみの損傷→T型
2) 末節骨の骨折を伴っているもの
a) 伸筋腱の牽引による裂離骨折型(extensor origin型)→U型
b) 長軸方向の力による関節内骨折型(bony origin型)→V型
3) 骨端線離開
4) 開放創による直接断裂
伸筋腱損傷を「腱性槌指」、骨損傷を伴う損傷を「骨性槌指」とする分類もある。
【治療】
1) 終止伸筋腱のみの損傷は保存的療法を原則とする。
DIP関節過伸展位、PIP関節屈曲位で4〜6週間の固定。
さらにDIP関節のみの伸展位保持装具を2〜4週間装用。
装具は徐々にはずすようにするが、ROM拡大訓練開始後もDIP関節伸展障害の再発傾向が高い。
伸展障害が再発すれば再度装着することを繰り返す。
伸展障害再発傾向が軽度であれば、日中はROM拡大訓練を行い、夜間は伸展位固定を行うように指導する。
2) 観血的療法の適応
観血的療法は、2本のKirschner鋼線を刺入する石黒法が一般的に用いられる。
@ 開放性損傷
A 関節面の1/3以上を占める大きな骨片を伴うもの
   転位が軽度であれば、例外的に保存的療法も可能な場合もある。
B DIP関節が掌側に亜脱臼しているもの
3) 陳旧例に対する治療
保存的療法で改善することが多いため、1)と同様の治療を一度は試みるべきである。
【補足】 mallet fingerによるswan-neck変形の発生機序
@ 終止伸筋腱断裂によって側索が近位に向けて退縮する。
A 中央索のPIP関節への伸展力が増加する。
B PIP関節掌側板の弛緩とともにPIP関節が過伸展する。
【参考文献】
神中正一著:神中整形外科学・第20版第9刷,南山堂,東京,1982
岩本幸英編著:神中整形外科学上巻・第22版第1刷,南山堂,東京,2004
岩本幸英編著:神中整形外科学下巻・第22版第1刷,南山堂,東京,2004
荻島秀男訳:手の痛みと機能障害(原著第3版)・第2版第3刷,医歯薬出版,東京,1988
二ノ宮節夫ほか編:今日の整形外科治療指針・第5版第1刷,医学書院,東京,2004
水野耕作ほか編:骨折治療学・第1版,南江堂,東京2000
内田淳正ほか編:ビジュアル基本主義2カラー写真で見る!骨折・脱臼・捻挫/画像診断の進め方と整復・固定のコツ・第1版第2刷,羊土社,東京,2006



 
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